日本ロマンチスト協会

Scroll

JOURNAL

読み物

日本ロマンチスト協会しらべ

織姫と彦星は、どこへ行った? ——短冊が映す、現代人の「脱ロマン」

  • ロマンス

ある日、協会にひとつの情報が舞い込んだ。

「最近の短冊、なんかロマンチックじゃないらしいですよ——」

ロマンの番人を自任するロマンチスト協会として、これは捨て置けない。我々はただちに現地調査に乗り出した。

商業施設の笹飾りの前に立ち、一枚ずつ短冊を読んでいく——「健康」「試験合格」「お金持ちになりたい」「推しのライブに行けますように」。

どれも切実で、どれも大切な願いだ。

だが、待ってくれ。恋は? 愛は? 織姫と彦星はどこへ行った?

現場で見たものは、予想以上の光景だった。ロマンチックじゃない短冊が、笹を埋め尽くしていたのでした。

これは偶然か、それとも時代の必然か。協会はひとつの結論を出した——「アンケートで真相を究明せよ」。
こうして全国男女300名を対象とした緊急調査が幕を開けたのです。

『もうすぐ七夕です。街の商業施設には笹が飾られ、色とりどりの短冊が揺れています。あなたは最近、短冊に何を書きましたか?』

アンケートより(全国・15~69歳・男女300名)

Q1:「今年の七夕にどんな願い事をしますか?」

「健康」と「何も願わない」がほぼ並んで首位、「恋愛・結婚」はわずか2.3%

……うーん。

もちろん、現実的な願いごとを否定するつもりはありません。健康は大切です。お金も大切です。

でも、あの夜空の下に笹を立てて、星に向かって書く言葉が「健康でいられますように」だけというのは、なんだか少し寂しくないでしょうか。

そもそも七夕って、なんだっけ

織姫(おりひめ)と彦星(ひこぼし)。天の川をはさんで、年に一度だけ会うことを許された二人の物語。これほどロマンチックな起源を持つ行事も、なかなかありません。

ただ、ここで少し正直に言い添えると——あらためて調べてみると、七夕の短冊に書く願いごとは、もともとは「技芸上達」が本来の伝統だったそうです。恋の願いを書く風習が正統というわけでもない。

だから「恋愛を願う七夕の伝統が廃れた!」と憤慨するのも、ちょっと違うかもしれません。

でも、それでも。

ロマンチスト協会としては言いたいのです。「彼氏・彼女がほしいです」と短冊に書くくらいの、ゆるくてちょっと照れくさいロマンティックな心を、もう少し大事にしてほしい、と。

Q2:恋の願いを、したことがありますか

今回のアンケートでは、「七夕に恋の願い事をしたことがあるか」も聞きました。

これはつまり——かつては短冊に恋を書いた人たちが、大人になるにつれてだんだん書かなくなっていった、ということです。

ちょっと意外だったのは、男性のほうが「恋の願い事をしたことがある」割合が高いこと。なんとなく女性のほうがロマンチックなイメージがありますが、短冊に関しては男性のほうがオープンだったようです。

そして、もう一つ気になったのが自由回答の傾向です。「短冊は他人に見られる」ことを意識した文言が目立ちました。見られる前提で書くから、本当に願いたいことは書けない。

「無難なことを書いてしまう」という声からは、なんとも日本人らしい奥ゆかしさ——いや、正直に言えば、照れと自意識が、ロマンを殺しているのかもしれません。

それでも、短冊の中に残っていたロマン

自由回答の中に、こんなエピソードがありました。

「星が見えない七夕が多かったが、いつかの晴れた七夕の日に結婚を決めた」
「好きな人と標高の高いところへ行き、草原で寝転んで空を見た」
「会社帰りにたまたま好きな人と会えたらいいなと思っていたら、駅のホームで会えたこと」
「小学校高学年で止めてしまったが、その後、社会人になって彼女ができた時に、二人で楽しむのに復活した行事」

読んでいて、胸が少し温かくなりませんか。

今回のアンケートの回答者は50代・60代以上が全体の7割以上を占めていました。

昭和・平成を生きてきた人たちにとって、かつての七夕は人と人を結ぶ、豊かな時間でもあったのだと思います。短冊を書いた記憶が、誰かとの記憶と重なっている。

そういう夜が、この国にはたしかにあった。これはもう、日本ロマンチスト協会として守るべき、いや、保護活動を行うべき行為、もしくは概念なのだと思います。

夜空に向かって本音を一行だけ記すこと。照れや自意識をほどいて、星の前で少しだけ素直になること。

私たちはこの小さなロマンティックを、『絶滅危惧ロマンティック』に認定します。種名は、「七夕に恋の願い事をする人」。

結びに:あなたの短冊に、ロマンを一行

健康を願ってはいけない、なんてことはありません。お金の心配をしてはいけない、とも思いません。

ただ、七夕という夜だけは。笹の前に立ったその瞬間だけは。

「好きな人と、もう少し近づけますように」
「素敵な出会いがありますように」
「あの人のことが、好きです」


そんな一行を、短冊に忍ばせてみてほしいのです。見られたって、いいじゃないですか。恋は、隠すものじゃなくて、星に向かって叫ぶものだったはずだから。

織姫と彦星は、今年もちゃんと天の川の向こうにいます。

【後日談】
調査の結果を会長に報告した際、会長から返ってきた言葉。

「そういえば、昔お付き合いしていた人が、七夕が誕生日で、 はじめての誕生日に向けて、笹の葉を林から刈り取り、 その人と未来でしたいことを短冊をたくさんつけて願い事としてたくさん書いて持っていき、お祝いしたのを思い出した」と。

圧巻である……。

記事:研究員 柴田 英知

【調査概要】
・調査内容 :七夕の願いごとに関する調査
・調査対象 :全国/男女/15歳以上69歳以下
・調査期間 :2026年6月24日
・調査人数 :300人
・調査機関 :Freeasy
※本調査結果をご利用いただく際は、「日本ロマンチスト協会調べ」と明記ください。

一覧に戻る