「片耳ずつイヤホン」は絶滅した? 300人に聞いたら、意外な“青春”が見えてきた
イヤホンを片方ずつ耳に入れて、二人で同じ曲を聴く。
かつて、そんな光景がありました。
ひとつのイヤホンから伸びる左右のコード。その先に一人ずつ。ドラマや映画、漫画の中でも、どこか青春を感じさせる場面として描かれてきた気がします。
……でも、実際はどうだったのでしょう。
本当に多くの人が経験した光景だったのか。それとも、作品の中で見ているうちに「昔はみんなやっていた」ような気がしているだけなのか。
そして、ワイヤレスイヤホンが当たり前になった今、あの行為を私たちはどう感じるのでしょう。
そこで日本ロマンチスト協会は、全国の20~50代男女300人に「音楽の楽しみ方」について聞いてみました。
「片耳ずつ」は、本当にみんなの思い出だった?
まず聞いたのは、「有線イヤホンを誰かと片方ずつ使い、同じ音楽を聴いたことがありますか」。

「恋人・配偶者・好きな人や気になっていた人としたことがある」は22.0%。「友人としたことがある」は16.7%でした。
一方で、「ドラマ・映画・漫画・CMなどで見た記憶がある」は18.3%。「したことも、見たり聞いたりした記憶もない」は45.0%です。
……なるほど。
どうやら「片耳ずつイヤホン」は、誰もが経験した平成の定番というより、実際にやった人もいれば、作品の中で見た人もいる、ある時代の小さな風景だったようです。
消えかけた今も、28%が「青春だな」と思う
では、その光景を見た時、わたしたちは何を感じるのでしょう。

最も多かったのは「特に何も感じない」の30.0%でした。
ところが、そのすぐ後ろに「青春だなと思う」が28.0%。「親密さを感じる」は16.7%、「ほほえましいと思う」は16.3%でした。
何も感じない人が3割。その一方で、ほぼ同じ割合の人が「青春」を感じている。
さらに、恋人や配偶者、好きな人などと実際に経験した人に限ると、「青春だな」は45.5%、「親密さ」は34.8%、「懐かしい」は31.8%でした。
もちろん、経験したからロマンティックに感じる、とまでは言えません。
ただ、同じイヤホンでも、そこに誰かとの記憶が結びついているかどうかで、見え方は少し違ってくるようです。
共有していたのは、「音楽」だけではなかった
イヤホンは本来、一人で音楽を聴くための道具です。
それを二人で使うと、二人は一定の距離以上には離れられません。曲を聴いている間、自然と近い場所にいることになります。
つまり、二人が共有していたのは、音と、距離と、時間。
同じ曲が流れている数分間、二人はその三つをまとめて共有していたことになります。
ところが今は、好きな曲のURLを送れば、離れた場所にいても簡単に音楽を共有できます。
そこで今回は「今、誰かと音楽を共有するとしたら、どんな方法で共有したいか」も聞きました。

すると、共有したい方法の1位は「ライブやフェスなどで、同じ場所で同じ音楽を聴きたい」の22.7%。
続いて「スマートフォンのスピーカーから一緒に聴きたい」20.0%、「カーステレオ」15.7%、「Bluetoothスピーカー」15.3%でした。
一方、「URLを送りたい」は11.0%、「SNSやDMで紹介したい」は4.0%。ちょっと意外な結果です。
技術の進歩によって、わたしたちは離れていても簡単に同じ音楽を共有できるようになりました。なのに「どう共有したい?」と尋ねると、上位に並んだのは同じ場所で一緒に聴く方法でした。
わたしたちは、音楽を口実にして誰かと同じ時間を過ごしたいのかもしれません。
20代は「それぞれで一緒に」

ただ、共有の形は年代で違いがありました。20代で「ひとつのイヤホンを片方ずつ使って一緒に聴きたい」と答えた人は2.7%。
ところが、「それぞれのイヤホン・ヘッドホンで同じ曲を一緒に聴きたい」は18.7%。全年代で最も高い数字でした。
道具の共有から、体験の共有へ。
「片耳ずつ」という形は薄れつつあっても、「一緒に聴く」という感覚は、別の形で残っているようです。
「片耳ずつイヤホン」を絶滅危惧ロマンティックに認定
「片耳ずつイヤホン」には、確かに青春の香りがありました。とはいえ、コードが短いことに価値があったわけでも、片耳からしか聞こえないことが素晴らしかったわけでもありません。
技術が持っていた制約から、本来の機能とは別の親密さが生まれました。
そして現在、「ひとつのイヤホンを片方ずつ使って一緒に聴きたい」と答えた人は300人中13人、4.3%でした。
これを踏まえ、日本ロマンチスト協会は、一人で聴くためのイヤホンを二人で分け合い、音だけでなく距離と時間まで共有した「片耳ずつイヤホン」を「絶滅危惧ロマンティック」に認定します。
ところが、有線イヤホンが帰ってきた
……と、ここで終わるはずでした。ところが最近、若い世代の間で有線イヤホンが少し違った意味で注目されています。
SHIBUYA109 lab.が15~24歳の男性646人を対象に実施した「メンズトレンド大賞2025」では、有線イヤホンがファッション部門1位を獲得。首や腰に巻くなど、Y2Kファッションのアイテムとしても使われているそうです。「3COINS」公式サイト・店舗ブログでも有線イヤホンが人気商品として紹介されています。
もちろん、有線イヤホンが再び主流になったわけではありません。でも、ある世代にとって「懐かしいもの」になった道具を、別の世代が「新しいもの」として見つけている。
だとしたら、いつか。有線イヤホンを首から下げた若者が、「これ聴いてみる?」と片方を差し出す。
そんな光景まで戻ってくることがあるのでしょうか。
ロマンティックな光景は、世代を超える……のかもしれません。
記事:研究員 佐々木 康弘
【調査概要】
調査内容:音楽の楽しみ方に関する調査
調査対象:全国/男女/20歳以上59歳以下
調査期間:2026年9月28日
調査人数:300人(20代・30代・40代・50代、各75人)
調査機関:Freeasy
調査主体:日本ロマンチスト協会
※本調査結果をご利用いただく際は、「日本ロマンチスト協会調べ」と明記ください。
【主な参考資料・出典】 2026年10月1日閲覧
※本記事は上記資料に加え、関連メディアの公開情報を対象としたデスクリサーチ(編集者調べ)に基づき作成しています。