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近年、SNSで「メロい」という言葉を目にする機会が急速に増えている。
メロいとは、「めろめろ」の「めろ」に形容詞語尾「い」を付けたものであり、見ているほうが夢中になって、だらしなくなるほど、圧倒的な魅力のある様子を指す。
2024年には三省堂の「今年の新語」や「SNS流行語大賞」でもノミネートされ、翌年も様々なメディアで「Z世代のトレンド」として取り上げられている。
では、実際に人々は何に対して「メロい」と言っているのだろうか。
編集部がSNS上の「メロい」を含む過去3年分の投稿(約2,150件)を分析した結果、使用対象は人物が約78%、動物・自然が約6%、物が約8%、性格や価値観などの抽象概念が約8%含まれていることがわかった。

人々は、猫の鳴き声にも、ジャージにも、家のデザインにも、大きな樹木にさえ、「メロい」と言っている。
「メロい」は、画一的なときめきだけに向けられる言葉ではない。なぜ、私たちはそれを「好き」と言わず、「メロい」と言うのだろうか。
かつて、私たちはよく「萌え」と言っていた。
「ツンデレ萌え」「メガネ萌え」「妹萌え」。主にアニメやゲームのキャラクターに対して、どの属性に心をつかまれたのかを示す言葉として広く使われていた。
好きになった理由をきちんと説明し、「私はこの人のここに弱いです」と、感情の急所を申告するような言葉だったとも言える。
その後、徐々に「萌え」は衰退し、「尊い」へと移る。
「尊い」は、推しの存在そのものを称揚する。「存在してくれてありがとう」と、推しを高みに置く崇拝的な感情がそこにはある。もはや好きというより、祈りに近い。
そして近年登場したのが「メロい」だ。

投稿のうち約58%が「○○がメロい」などの短文使用であり、画像や動画を添付して即時的に感情を伝える傾向が強い。
この簡潔さ・即時性が「メロい」という言葉の拡散力を支えている要因の一つと考えられる。
ひとつの対象に対して、「萌え」「尊い」「メロい」はどのように使い分けられているのか。
Xの投稿を比較すると、その違いはさらに明確であった。
たとえば、Snow Manの目黒蓮。

彼に「萌え」が使われるのは、クールな外見と天然のギャップが露呈する瞬間である。「ギャップ萌え」という定番表現に集約され、保護欲のニュアンスが強い。
「尊い」が使われるのは、人間性・ファンサービス・努力に対して。そして「メロい」が使われるのは、顔・視線・スタイル・優しい表情・色気による「心がとろける」ような感覚的な魅力である。
次に、対象がアスリートになると、傾向が変わる。

大谷翔平選手の場合、「尊い」の使用頻度が圧倒的に多い。生き方や実績に対する敬意がそのまま言葉になる。
一方で、「萌え」はほとんど使われない。
怪物級のスーパースター像は、「守ってあげたい」という感情を寄せ付けにくいからだ。
こうした「言葉の使われ方」を見ていくと、「メロい」には大きな特徴があることがわかる。
それは、多くの投稿が「なぜメロいのか」を説明していない点である。
顔がいいから。
仕草がかっこいいから。
色気があるから。
そう理由を並べる前に、もう心が動いてしまっている。ときめきが押し寄せ、言葉が追いつかないまま、「メロい」とこぼれる。
ほとんど反射のように吐き出される言葉、それが「メロい」なのだ。
LIPS laboが2026年4月に発表した「元祖メロい芸人ランキング」では、1位を獲得したのがお笑いコンビのレインボー・池田直人だった。
寄せられたコメントを読むと、彼に向けられた「メロさ」の特異性が見えてくる。

投票理由からは「可愛らしさ」と「たくましさ」という対立する要素が共存している。
守ってくれる強い男性でも、守ってあげたい可愛い男性でもなく、並んで同じものを面白がってくれる存在。そんな中性的な異性像も「メロい」に包括できるのである。
さらに、X上のコメントでは「愛方のジャンボの方が全然メロい」「内面でいえばジャンボの方がメロいだろ」などの反論も多数みられた。
それは、「メロい」が人々の感性によっていくらでも姿を変えることを示している。
だから「メロい」は、他人に理解されなくても良い。自分でも説明しきれないけれど、確かに胸を震わせたときめきを、軽やかに共有できるコミュニケーションワードなのだ。
ときめきという感情の正体さえ、理路整然と答えてくれるAIが、すぐ隣にいる時代に、
うまく言葉にできないけど、惹かれてしまうもの。
可愛いのか、かっこいいのか。守りたいのか、守られたいのか。
矛盾したまま、不完全なまま、心が動いてしまう。
「メロい」という3文字は、人間の身勝手で曖昧な「ときめき」を、そっと肯定してくれる。
記事:研究員 大森 千春
【調査概要】
・調査内容 :X(旧Twitter)における「メロい」という言葉の使用実態
・調査対象 :Xにおける「メロい」「萌え」「尊い」を含む投稿の総取得数約8,450件のうち、象徴的な約2,150件を詳細に分析
・調査期間 :2026年4月1日〜5月13日(投稿データは2023年5月〜2026年5月までの過去3年間を参照
※本調査結果をご利用いただく際は、「日本ロマンチスト協会調べ」と明記ください。
【主な参考資料・出典】 2026年5月閲覧
※本記事は上記資料に加え、関連メディアの公開情報を対象としたデスクリサーチ(編集者調べ)に基づき作成しています。
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