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プラネタリウムといえば、星座や宇宙の話を聞く場所という印象が強い。
ところが、最近は少し変わった企画もある。
コニカミノルタプラネタリウム(東京・有楽町、池袋、横浜、名古屋の4館)で上映されている「R18オトナ♡プラネタリウム」は、その名の通り“大人限定”のプログラムだ。
2020年に話題となった企画の続編『R18オトナ♡プラネタリウム 2回戦 ― 古代ギリシャのハレンチナイト ―』では、古代ギリシャの神話や文化をベースに、神々の恋愛や性愛事情を星空とともに紹介していく。
今回、日本ロマンチスト協会の研究員である大森と佐藤、通称・ダブル千春コンビが、それぞれ別会場でこのプログラムを体験してきた。
同じ名前の研究員がそろうのも、ちょっとロマンのある偶然だ。
大森が訪れた有楽町の回は、平日の夜ということもあり、30〜40代の男女ペアが中心だった。夫婦やカップルが多く、落ち着いた雰囲気である。
大森「静かな大人のデートという感じでした」


確かに、「R18」「夜限定」という条件は、少し変わった夜のデート体験として機能しているように見える。
一方、佐藤が訪れた池袋の回はかなり雰囲気が違った。
佐藤「若いカップルがめちゃくちゃ多い……!」
10〜20代のカップルがほとんどで、女性同士の友人グループや海外からの来場者も見られ、かなりにぎやかな客席だったという。
佐藤「しかも私、1時間前にソロで待機してたんですよ」
大森「それは勇気いる……」
佐藤「カップルだらけの列に一人で並ぶの、めちゃくちゃ恥ずかしい。R18なのに一番恥ずかしいのそこだった」
上映前、スタッフが客席に問いかける。
「この中で浮気や不倫をしたことがある人、手を挙げてください」
もちろん、手を挙げる人はいない。
スタッフは続ける。
「このあと、浮気や不倫をした人への罰の話が出てきますので、心当たりのある方はぜひ注目してください」
佐藤「カップルが多い会場でそれ聞くの、ちょっと気まずくない?(笑)」
しかし、このような問いかけまで含めてオープンに扱えるところが、この企画の面白さでもある。


舞台は約2400年前の古代ギリシャ。
当時はすでに天文学が発達しており、
・高台での星の観測
・地球の大きさの推測
・天体模型(プラネタリウムの原型)
といった研究が行われていた。
しかし同時に、古代ギリシャ社会は性愛に対して比較的オープンな文化でもあった。
このプログラムでは、そうした天文学の発展の裏側にあった恋愛観や性文化を紹介していく。
構成としては、
星空の解説 → 星座の由来となったギリシャ神話の神々の紹介 → 恋愛エピソード → 古代ギリシャの文化解説
という流れだ。
内容自体はかなり下ネタが多いのだが、古代ギリシャ研究家の藤村シシン氏による解説と、コミカルな演出によって、どこか教養番組のような雰囲気になっているのが印象的だった。
たとえば当時の身体観では
「男性器が大きい=野蛮で愚か」
「男性器が小さい=理性的で知的」
と考えられていた。
大森「これが当時の価値観だったらしい」
佐藤「神様にも偏見ってあるんだね」
また、同性愛は異性愛よりも普遍的だとされていた。
佐藤「むしろ近代になってから、性の規範が強くなった部分もあると思う。日本でも明治以降に性の規律が強くなったって言われてるし。昔の社会って、意外ともっとおおらかだったのかも」
このプログラムでは、星座の神話を入り口に、神々の恋愛事情が紹介される。
なかでも中心となるのは、最高神ゼウスの恋愛エピソードだ。

ゼウスは白鳥、鷲、小鳥など、さまざまな姿に変身して恋愛関係を築いたとされる。
恋愛逸話が多いのは、人々が「自分はゼウスの血を引いている存在でありたい」と考えていたからだとも言われている。
さらに女神ヘラとの関係では、クイズが出される。
ゼウスとヘラの行為はどれくらい続いたか?
答えは――
300年。
大森「神様だからスケールが違う」
佐藤「そもそも神様も性行為するんだ、ってところから驚き」
神話の中では、神々の恋愛もかなり奔放だ。
たとえば、愛の女神アフロディーテと戦いの神アレスの不倫。
それを知った夫ヘパイトスによる懲罰などが紹介される。
しかもその罰がなかなか過激で、隠毛を焼かれる、肛門に大根を入れられるなど、神話とは思えないレベルの罰が語られる。
佐藤「神でも不倫はダメなんだ」
大森「倫理観はあるんだね(笑)」
神々の物語には、人間の欲望や嫉妬、愛情といった感情がそのまま映し出されている。
神話とは、もしかすると人間が自分たちの感情や行動を理解するために語り続けてきた物語なのかもしれない。
プログラムでは、古代ギリシャ語の隠語も紹介される。

性行為中の感嘆詞として
・パパーイ(Oh!)
・アゲ(いく!さぁ!)
・エーデー(もう!)
といった言葉が登場する。
声優の演技もかなり本気で、客席から笑いが起きていた。
大森「帰りのカップルが、ずっと“アゲ”って言ってた」
佐藤「もう流行語じゃん(笑)」
今回の体験で興味深かったのは、プラネタリウムという空間の効果である。

照明を落とし、星座と結びつけてロマンティックに見せることで、高尚な雰囲気=参加しても恥ずかしくない、非日常の体験になるという価値が生まれていたと感じた。普段なら少し気まずくなるテーマでも聞くことができる。
大森「会議室でこの話を聞いたら、ただの下ネタだよね(笑)」
暗闇の空間は、ある種の心理的な安全装置として機能しているのかもしれない。
日本では「性」はまだ少しタブーになりがちなテーマだ。
しかし神話や文学、哲学、芸術を見れば、恋愛や性愛は人間文化の根本にある。
今回のプラネタリウムのように、星空や神話と結びつけて語ることで、普段は話しづらいテーマもどこか知的でロマンティックなものとして受け取ることができる。
そう考えると、性を少し知的に、そして笑いながら語る場は、もっとあってもいいのかもしれない。

例えば
・夜の動物園/水族館でめぐる、動物たちの性事情
・夜の書店で、お酒を飲みながら聞く文豪の恋愛史
・ホテルのコース料理とともに嗜む、R18ロマンス落語
など、同じ発想で広がる企画はいろいろありそうだ。
「性」というテーマを避けるのではなく、ユーモラスに、少し知的に語ってみる。そんな場づくりを、日本ロマンチスト協会でも考えていきたいところだ。
星空の下で神々の恋愛を聞いた夜は、そんな可能性を少し感じさせる時間でもあった。
▼今回体験したプログラムはこちら
「R18オトナ♡プラネタリウム 2回戦 -古代ギリシャのハレンチナイト-」
https://planetarium.konicaminolta.jp/program/otona2/
記事:研究員 佐藤 千春/研究員 大森 千春
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