読み物

12月。街はキラキラ、人もキラキラ。
そのきらめきのなかで私は、研究員をしつつ、なぜか毎年この季節になると同人誌を作りはじめ、スケジュールが燃え上がる“限界同人作家”と化します。
でもね。
そんな私にも、ロマンティックを補給する時間が必要なんですよ。
それこそがクリスマスケーキ。
クリスマスケーキとは何か?
それは「今年も頑張ったね」という気持ちを、砂糖と乳脂肪で往復ビンタしてくる甘味界の祝福装置。
最高。
恋人がいなくても、予定が粉雪でも、クリスマスケーキはロマンを連れてきてくれる。
そんなわけで毎年ケーキに全力を注ぎ続けている私が、今年選んだ一品と、語り継ぎたいロマンティックなケーキたちをご紹介します。

「世界のベスト・レストラン50」に名を連ねる南青山の名店・NARISAWA(ナリサワ)が手掛けたクリスマスケーキ。
ミルククリーム、バニラをたっぷり使ったクリームブリュレ、ミルキーなホワイトチョコムース……白い素材だけで丁寧に積み上げた、“白の世界”が広がります。
ひと口食べるたび、その白さにいろんな表情があることに気づかされ、「白って本当に200色あんねんな……」としみじみ実感。
いつも何となく味わっていたバニラと、こんな真剣に向き合う日が来るなんて。そう思わせてくれる新鮮なケーキでした。
購入時期:2021年12月

ドレスに見立てたデコレーションに、砂糖細工のプリンセスが佇む、完璧なロマンティックケーキ。
生クリームとスポンジのあいだには、甘さと爽やかな酸味をあわせ持ついちごがたっぷりと仕込まれ、プリンセスのドレスを内側から支えています。
見た目の可憐さだけでなく、食べた瞬間にふわっと広がる甘酸っぱさも、このケーキの物語をつくっています。
そして、食べ進めるにつれて、プリンセスはゆっくりと姿を消していきます。
……尊い……(無常)
クリスマスに召喚された美しき幻想(プリンセス)が、孤独な胃袋という現実に溶けて消えていく。その滅びの美学こそ、クリスマスの真のロマンなのかもしれない……。
購入時期:2022年12月

ホテルニューオータニ開業40周年を記念して誕生した「スーパーシリーズ」の第一弾。
ショートケーキ界の頂点にして、王道を極めた一品。そして、これをひとりで食い尽くす快感ッ……!
博多あまおう × 太陽卵スポンジ × 大牟田産生クリーム。
三位一体とはまさにこのこと。
軽いのに濃厚、繊細なのにしっかり満足感があります。なによりスポンジから卵の甘みがしっかり感じられて「ショートケーキってここまで高みに行くんか……?」と感動。
※段ボール机の上で撮影した写真を掲載していますが、これが師走の現実なのでそのまま載せています。多忙な研究員のリアルです。
購入時期:2023年12月

LOUANGE TOKYO(ルワンジュ 東京)の真っ赤なリボンをかけた “NOUNOURS(ヌヌース=フランス語でテディベア)” が鎮座する、存在感たっぷりの超濃厚チョコレートケーキです。
つややかなチョコレートにコーティングされた表面をカットすると、ヘーゼルナッツやオレンジが折り重なる美しい層が現れます。ひと口食べれば、濃厚な“大人のチョコ”を実感するしっかりした味わい。
マジでテディベアがかわいい。それに尽きる。
当時、きらびやかなクリスマス仕様の六本木で8,000円のケーキをひとりで受け取った私は、「高級ケーキを持つ私、絶対に幸せ」と謎の自己肯定感を得ていた。若かった。
購入時期:2017年12月

大好きなチョコレート屋、Minimal(ミニマル)さん。
毎年異なる趣向のケーキを出されていますが、今回ご紹介するのは、フルーツやスパイスを一切使わず、単一産地のカカオ豆を複数の製法で掛け合わせ、「クリスマスティーの香り」を表現した、知的すぎる一品です。
ベースとなるクラシカルなチョコレートのしっかりした味わいがありながら、クローブやカルダモンのようなスパイス感、そして柑橘系のニュアンスがふわりと立ち上がります。
「チョコだけで、こんな香りのレイヤーが実現できるのか」と、ひと口ごとに驚愕します。
贅沢で華やかながら甘さは上品。コーヒーはもちろん、赤ワインなどのお酒との相性も抜群な、大人のためのケーキです。
購入時期:2019年12月

今年選んだクリスマスケーキは、九品仏の人気パティスリーINFINI(アンフィニ)が、松屋銀座の開店100周年にあわせてつくった特別なケーキ。構成は、苺 × 薔薇 × ベルガモット × 和紅茶。生クリームに飽きやすい派としては、まさに「待ってました!」と叫びたくなる、アロマを愉しむための設計です。
いや、シンプルにうまそうすぎる!!
松屋銀座さん、100周年おめでとうございます。今年もケーキとチキンで大変お世話になります(そして来年もお世話になります)。
恋人がいようがいまいが、原稿が炎上していようが、最高のケーキさえあれば、それだけでクリスマスはロマンティックに包まれます。
むしろ忙しい12月だからこそ、ひとつのケーキが、その年の自分を励ましてくれる。
これが私のマインドフルめし!
今年も、箱を開けた瞬間からロマンティックが始まります。
記事:研究員 佐藤千春
© NIPPON ROMANTICIST ASSOCIATION All rights reserved.